水虫
水虫は医学的には「白癬(はくせん)」と言います。
カビの一種である白癬菌に感染することで発症します。
白癬は足だけでなく、爪や手、頭、体や陰部など全身の皮膚に生じます。
足の白癬を「水虫」、体の白癬を「たむし」、陰部の白癬を「いんきんたむし」と呼ばれることもあります。
日本人の5人に1人は足白癬、10人に1人は爪白癬と言われるほど患者様の多い病気です。
一見、足白癬や爪白癬のように見えても、湿疹や他の爪の病気の場合もあります。
また、甲状腺などの内臓の病気が隠れていることもあります。
水虫かな?と思ったら、市販の水虫のお薬を塗る前に、まず、皮膚科を受診し、水虫かどうかを確認するようにしてください。
市販のお薬を塗ってしまうと、白癬菌を見つけることができず、水虫かどうかの判断ができなくなってしまいます。
白癬の種類
白癬は「足白癬」「爪白癬」「体部白癬」「頭部白癬」と部位によって名称が異なります。
足白癬
趾間型
・足白癬で最も多い
・指の間が白っぽくふやけてジュクジュクする
・皮膚がポロポロむける
・かゆみを伴う
・塗り薬を2ヵ月以上外用
水疱型
・土踏まずや足の縁に小さな水疱やぶつぶつができ、それが破け、皮膚がめくれる
・水疱の中に白癬菌がいる
・痒みを伴う
・塗り薬を3ヵ月以上外用
角質増殖型
・かかとや足の裏がカサカサし、硬く厚くなる
・痒みはあまりない
・塗り薬を6ヵ月以上外用
・塗り薬は浸透しにくいため飲み薬を併用することがある

爪白癬
遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO)
・爪白癬の最も多く9割が遠位側縁爪甲下爪真菌症
・白癬菌が爪先端や爪の側縁から侵入し感染する
・混濁部は根元に向かって拡大する
・基本は飲み薬で治療する
・楔形は飲み薬が効きにくいので、塗り薬も検討する
表在性白色爪真菌症(SWO)
・爪白癬で2番目に多い
・白癬菌が爪甲表面の傷口から侵入して感染する
・点状や斑状の白濁が見られる
・塗り薬が効果的
近位爪甲下爪真菌症(PSO)
・爪白癬の中でもまれ
・白癬菌が爪の根元の爪甲に侵入して感染する
・混濁部は爪の成長に伴って先端に拡大する
・基本は飲み薬が効果高いが、以下に該当する場合は塗り薬も検討する
例)・肝機能障害があるかた
・妊娠中・授乳中のかた
・お薬のアレルギーがあるかたなど




体部白癬
症状がでる部位:体幹部や顔、首、腕、足など
初期症状は、ポロポロと皮がめくれる、赤く盛り上がった小さな発疹が現れ、輪を描くように辺縁が赤く盛り上がる特徴的な発疹に拡大していく。
多くの場合は、強い痒みを伴う
頭部白癬
症状がでる部位:頭
楕円形に髪が抜け、表面にフケのような細かい鱗屑が出る。脱毛斑内の毛は抜けやすい。かゆみなどの自覚症状がない。
白癬の治療方法
抗真菌外用薬(軟膏、クリーム、ローション)
部位や症状に合わせて適した外用薬が処方されます。
足は1日1回入浴後、それ以外の部分は1日1~2回(朝と入浴後)塗布します。
入浴後は皮膚がふやけてお薬が浸透しやすいため入浴後の外用が効果的ですが、寝る前や朝靴下を履く前に外用してもかまいません。毎日、継続して塗り続けることが大切です。
塗り薬の効果は2~4週間程度で現れてきますが、白癬菌は角質の奥で生き残っています。皮膚は約1ヵ月ですべての細胞が新しく入れ替わります(ターンオーバー)。白癬を完治させるためには、角質を含む皮膚の細胞が数回入れ替われる必要があると言われています。
足白癬であれば、2~6ヵ月、顔や体部の白癬は2~3ヵ月完治までにかかります。

お薬の適切な量について
白癬はカビの一種であるため、目に見える部分以外にも菌が広がっています。そのため、外用薬は充分広い範囲に塗ることが必要です。
足白癬は両足裏全体、顔や体の白癬の場合は、皮膚が見られる範囲からさらに1~2cm広く、症状が出ていないように見える部分にもしっかりと外用してください。
クリームや軟膏は人差し指の第一関節よりもちょっと多めを目安に図のように1/3ずつをまんべんなく塗りましょう。
人差し指の第一関節よりもちょっと多めに出したクリームや軟膏のうち、
①:その1/3ですべての指の間に塗布
②:次の1/3で、すべての足の指+足の裏の上半分に塗布
③:残りの1/3で足の裏下半分+かかとと側縁に塗布
上記のようにお薬を足に塗ると、両足で1日約1g使うことになります。10gのチューブに入ったお薬の場合は、10日前後で使い切るのが目安です。
爪白癬に対する外用薬
爪白癬は、従来の塗り薬では治療が困難でしたが、近年、爪の中まで浸透する爪白癬用の塗り薬2種類が開発されました。
爪が生え変わる6ヵ月~1年以上の間、1日1回塗り続ける必要があります。
比較的軽症な爪白癬のかた、肝臓が悪いかた、飲み薬を使いたくないかたは、塗り薬もご検討ください。
内服薬のような全身的な副作用はありませんが、爪の周りがお薬によってかぶれることがあります。

抗真菌内服薬
白癬の治療は主に外用薬を使いますが、以下のようなケースでは、内服薬が必要になることがあります。
・外用薬では治療が困難な爪白癬
・外用薬が浸透しづらい、角質増殖型の足白癬
・頭皮や髭など、毛のある部分に白癬菌が感染したケース
内服薬のような全身的な副作用はありませんが、爪の周りがお薬によってかぶれることがあります。
<リスクと副作用について>
まれに、肝機能障害や貧血などの副作用が起こることがあります。このため、内服期間中は定期的な採血で副作用のチェックが必要です。
爪白癬は内服治療でも完治は6~8割です。爪白癬になる前に外用薬で治療できる段階できちんと白癬の治療をすることが大切です。
治療のスケジュール
爪が根元から指先まで伸びるには6ヵ月から1年ほどかかります。飲み薬、塗り薬のどちらで治療を行うにしても、治療開始から治癒するまでには6ヵ月~1年、あるいはそれ以上かかります。

※顕微鏡検査・・・顕微鏡で爪の白癬菌が感染していることを確認します。
※血液検査(1)・・・初診時に血液検査を行い、以上がないことを確認した後、治療を開始します。
3ヵ月以内に行った血液検査の結果をお持ちいただければこの検査は不要です。
※血液検査(2)・血液検査(3)・・・内服開始から1ヵ月後と2ヵ月後に血液検査を行い、肝機能が悪くなっていないかを確認します。
検査で異常がある場合は、途中でお薬を中断することがあります。
※外用薬の場合は血液検査は不要です。
文責:みのお花ふさ皮ふ科 院長 角村 由紀子(皮膚科専門医)