酒さ
酒さ(しゅさ)は、顔に赤みやぶつぶつが生じたり、ほてりやヒリヒリ感、かゆみを伴ったりすることもある皮膚の病気です。
俗に「赤ら顔」とも言われます。
中高年の顔、特に頬や鼻に好発し、全体的な赤みと毛細血管拡張が数か月以上持続する、原因不明の慢性炎症性疾患です。
ステロイド外用剤を長期外用したことが原因のステロイド酒さもあります。
特に30-50歳代に発症しやすく女性に多い傾向がありますが、重症例は男性に多いのが特徴です。
主な症状
顔の赤み
顔の毛穴の周りに炎症がおこり、その上の皮膚に赤みが見られるようになります。
この赤みは一時的な場合もあれば数ヶ月、数年と続く場合もあります。
赤い盛り上がり
症状が進行すると、赤みが出ている部分は毛穴の周りが小さく盛り上がり、ポツポツとした状態になります。
膿(うみ)をもったぶつぶつ
顔の赤みや赤い盛り上がりがさらに悪化すると、膿のたまったぶつぶつになることがあります。
ニキビに似ていますが異なるものです。
毛細血管の広がり
毛細血管が広がると血流がふえるため、皮膚の上からでも血管の赤みが見えるようになります。
ほてりやヒリヒリ感、皮膚の乾燥も自覚することも多いです。
酒さの原因
酒さは、日光や高気温・低気温などの外部環境、精神的ストレスや食べ物などの内部環境、その他遺伝的訴因など、複数の原因が重なって発症・悪化すると考えられています。
そのため原因は不明なことが多いですが、長風呂やサウナ、飲酒や辛い物の摂取等といった行為が悪化原因になることがあります。
このような行為は毛細血管を広げるため、その習慣が日常的に繰り返されることにより毛細血管が常に開き、酒さは悪化しやすくなります。
酒さは以下の4種類に分類されます。
第一度:紅斑毛細血管拡張型
鼻先、頬、眉間、頤を中心に一過性の発赤が出現し、次第に持続性となり毛細血管拡張と皮脂の分泌を伴うようになります。
寒暖差や飲酒などで症状が増悪します。掻痒、ほてり感、易刺激性等の自覚症状があります。
第二度:丘疹膿疱型
病状が進行すると尋常性ざ瘡に類似した毛孔一致性の丘疹、膿疱が加わり、皮脂の分泌が強まります。
病変は顔全体に広がります。
第三度:瘤腫型・鼻瘤
丘疹が密集融合して腫瘤状とまります。
特に鼻が凹凸不整に隆起して赤紫色を呈し、毛孔が拡大してミカンの皮のような外観となります(鼻瘤)。
第四度:眼型
眼の周りの腫脹や結膜炎、角膜炎などを生じます。約2割は皮膚症状より先に出現します。
治療
保険治療

ニキビの治療に使用する抗生剤ミノサイクリン(ミノマイシン)やドキシサイクリン(ビブラマイシン)の長期内服や、こちらもニキビダニなどに有効なメトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル)が効果的です。

酒さの原因の一つにデモデックスと呼ばれるニキビダニが過剰に増殖し炎症を引き起こすことが原因と言われています。そのニキビダニを減らして酒さを治療するのがロゼックスゲルです。
炎症を抑えて、酒さの赤いブツブツ(紅色丘疹)を治療します。
刺激感などは少なく、1日2回顔に外用します。
また、その他やはりニキビに使用するイオウカンフルローション、抗生剤外用剤、脂漏性皮膚炎にも有効な真菌に対する抗真菌薬外用剤を使うこともあります。
自費治療
酒さは、皮脂過剰+毛細血管拡張・炎症応答が関与する複合疾患と考えられています。
単に皮脂を抑えるだけでは赤みや毛細血管拡張に対処できないことも多いため、レーザー治療や内服治療を含めた複合的なアプローチが重要です。
レーザー治療
内服(自費治療)

イソトレチノイン
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体で、重症ニキビや再発を繰り返すニキビの根本治療に用いられる内服薬です。
皮脂の分泌抑制、毛穴の詰まりを防ぐ作用、アクネ菌に対する抗菌・抗炎症作用により高い効果を発揮します。
イソトレチノインは酒さの治療としても効果がある可能性があります。
アビクリア、Vbeam、イソトレチノインによる治療に興味のある方はまずは美容カウンセリングをご予約ください。
外用(自費治療)

アゼライン酸
皮脂の分泌を抑えつつ赤みも抑え、美白作用もあるアゼライン酸クリームが軽度の酒さなら効果的です。
塗るとやや刺激を感じることがあるので、刺激感を減らすために、保湿を含めたスキンケアをした後に塗るのがポイントです。
【DRX AZAクリア:1,980円(15gチューブ)】

イベルメクチンクリーム
ブツブツを伴う赤み(第2度以上)なら、イベルメクチンクリームが有効です。
ロゼックスゲルと同様、酒さのニキビダニを減らして酒さを治療するのがイベルメクチンクリームです。
酒さの赤いブツブツ(紅色丘疹)に効果が高いと言われており、一般的にロゼックスゲルよりも効果が出るのが早いと言われています。
イベルメクチンクリームもロゼックスゲルと比べると刺激感がありません。1日1回入浴後に外用します。
【イベルメクチンクリーム:5,500円(30gチューブ)】

ブリモニジン外用薬(エリセゴゲル・ミルバソゲル)
ブリモニジンが脳内のα2受容体を刺激すると血管が拡張し血圧が下がりますが、皮膚などの毛細血管にあるα2受容体を刺激すると、逆に血管が収縮して、細くなります。
酒さでは顔面の毛細血管が拡張し赤みが発生しているため、ブリモニジンを塗布することで一時的に(12時間程度)血管を収縮させ赤みを抑えることが可能になります。
1日1回(入浴や洗顔後)、保湿後に患部に塗布してください。赤みの改善は一時的なため根本治療にはなりませんが、大事な予定の前などに赤みを改善させたい方にはこちらがおすすめです。
【ブリモニジン外用薬(エリセゴゲル):7,700円(15gチューブ)】
文責:みのお花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 院長 角村 由紀子(皮膚科専門医)

