はじめに

肌の下に見慣れないしこりを見つけた時、「これってニキビかな?それとも、もっと厄介なもの…?」と不安に感じた経験はありませんか。見た目が似ているため、多くの人がニキビだと思い込み、放置してしまいがちな皮膚のできものがあります。
それが「粉瘤(ふんりゅう)」(別名アテローマ、アテローム)です。
この記事では、よくあるけれど誤解されがちな粉瘤について、知っておくべき5つの意外な真実を専門家の視点から分かりやすく解説します。そのしこりの正体を知ることで、適切な対処法が見えてくるはずです。
目次
- 1.ニキビと粉瘤の決定的な違いは「臭い」と「黒い点」
- 2.自然には絶対に治らない。放置すると炎症のリスクが高まる
- 3. 脂肪のかたまり(脂肪腫)とは「硬さ」「動き」「中心の黒い点」が違う
- 4. 治療は「切開法」か「くり抜き法」。メリット・デメリットを考慮して、選択を
- 5. 「粉瘤癌(粉瘤がん)?」ごく稀に悪性化することも。自己判断せず専門医へ
- まとめ
1.ニキビと粉瘤の決定的な違いは「臭い」と「黒い点」
粉瘤とニキビは、見た目が似ていることがありますが、原因も性質も全くの別物です。
ニキビは主に10代〜30代にできやすいのに対し、粉瘤は年齢に関係なく誰にでもできる可能性がありますが一般的に加齢と共に出来やすくなる傾向があります。以下のポイントを知れば、より正確に見分けることができます。
大きさの成長
ニキビは大きくなっても数ミリ程度で、1cmを超えることはほとんどありません。一方、粉瘤は皮膚の下にある袋の中に古い角質や皮脂が溜まり続けるため、徐々に大きくなっていきます。放置すると数センチ、時には何と10cm以上にまで成長することもあります。だからこそ、小さいうちに手術する方が、傷跡も小さく、体の負担なく治療できるのです。特有の悪臭
粉瘤の袋の中身は、本来はがれ落ちるはずだった角質や皮脂などの老廃物です。そのため、独特の臭いを放つことがあります。また、強く押さなくても開口部から臭いが漏れ出ることがあります。これはニキビには見られない決定的な特徴です。中心の黒い点(開口部)

粉瘤の多くは、しこりの中央に「開口部」と呼ばれる小さな黒い点が見られます。臍(ヘソ)と呼ぶこともあります。これは皮膚と袋がつながっている部分で、毛穴の詰まりのように見えますが、粉瘤特有のサインです。ここの開口部を切除して取り除かないと粉瘤は再発します。
※医療機関ではさらに皮膚エコーを用いて、ニキビか粉瘤かを見分けることが可能です。
2.自然には絶対に治らない。放置すると炎症のリスクが高まる

粉瘤に関する最も重要な事実の一つは、ニキビとは異なり、自然治癒しないということです。ニキビは塗り薬や飲み薬で治りますが、粉瘤が塗り薬や飲み薬で治ったり、時間が経てば勝手に消えたりすることは決してありません。根本的な治療には、原因である袋そのものを外科的に取り除く必要があります。そして、放置する最大のリスクは「炎症」です。何らかのきっかけで袋が破れ、自分の体に異物として認識されたり、細菌に感染したりすると「炎症性粉瘤」となり、急に赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を伴います。こうなると、すぐに治療が必要になります。
小さいうちに対処すれば、それだけ傷跡をきれいに、そして少ない負担で治療できるのです。粉瘤は、放置すると大きくなったり、炎症を起こす可能性があるため早めに病院を受診する必要があります。
3.脂肪のかたまり(脂肪腫)とは「硬さ」「動き」「中心の黒い点」が違う
粉瘤は、ニキビだけでなく「脂肪腫」という良性の腫瘍ともよく混同されます。脂肪腫は脂肪細胞が増殖してできた塊で、触った感触や時間経過による変化で区別することができます。
- 中心の黒い点
前述の中心の黒い点(開口部)が粉瘤ではあり、脂肪腫が無いのが特徴的です。 - 硬さと動き
脂肪腫は指で押すと、消しゴムに例えられるような柔らかさがあり、可動性がある、つまり皮膚の下で独立してコロコロと動くのが特徴です。一方、粉瘤は脂肪腫より硬く弾力のあるしこりで、皮膚の一部が袋状になったものであるため、皮膚表面にくっついており、しこりを動かそうとすると皮膚も一緒に動きます。また前述の中心の黒い点(開口部)が粉瘤ではあり、脂肪腫が無いのも特徴的です。 - 成長の仕方
粉瘤も脂肪腫も放置すると徐々に大きくなるので、成長の仕方で見分けることはできません - 腫れて痛くなったことがあるかどうか
粉瘤は前述のように炎症性粉瘤になることがありますが、脂肪腫が腫れて、痛くなるようなことはありません。
※更に医療機関では皮膚エコーやMRIなどの画像診断を用いて、脂肪腫か粉瘤かを見分けることが可能です。
4. 治療は「切開法」か「くり抜き法」。メリット・デメリットを考慮して、選択を
「手術が必要」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、現代の粉瘤治療は驚くほど進化しており、患者さんの心身の負担を最小限に抑えることが主流です。粉瘤の根本治療には、袋ごと完全に取り除く外科手術が不可欠です。手術方法としては「切開法」と「くり抜き法」があります。
切開法
「切開法」は、オーソドックな手術方法で粉瘤の周囲を皮膚ごと切開する、切除する方法で、再発のリスクは少ないです。また非常に大きい腫瘍(例えば5cm異常など)や、炎症を繰り返して硬く癒着している粉瘤は切開法を選択します。
くり抜き法
トレパンという特殊な円筒状のメスで粉瘤の中心に小さな穴を開け、そこから内容物を絞り出し、しぼんだ袋を抜き取る手術です。「くりぬき法」には、以下のような多くのメリットがあります。
- 傷跡が小さい(4〜5mm程度)
- 手術時間が短い(5~20分程度で終わる)
- 手術は1回で完了する
- 炎症の引きが早く、回復が早い
ただし、くり抜き法では粉瘤の「袋」「壁」を取り残してしまい再発してしまうリスクがあり、大きな粉瘤や炎症を繰り返して硬く癒着している粉瘤の切除には適しません。
切開法かくり抜き法、どちらを選択するかは主治医の先生と相談ください。
5.「粉瘤癌(粉瘤がん)?」ごく稀に悪性化することも。自己判断せず専門医へ
最後に、最も重要なことをお伝えします。それは、自己判断せずに皮膚科専門医の診断を受けることです。
まず知っておいていただきたいのは、粉瘤はほとんどの場合、転移などしない「良性腫瘍」であるということです。しかし、ごく稀に粉瘤が悪性化し、「粉瘤癌(粉瘤がん)」といって有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)などの皮膚がんになるケースが報告されています。
急速に大きくなる、傷になり、血や膿がでるといった変化は悪性化のサインである可能性も指摘されています。しかし、これらの症状は単なる「炎症性粉瘤」でも起こりうるため、見た目だけで判断することは非常に困難です。経験豊富な皮膚科専門医でさえ、正確な診断のためにエコー検査やMRI検査などを必要とすることがありますし、最終的な確定診断は切除や生検(一部分だけ切り取る)をして病理検査をしないと分かりません。気になるできものを見つけたら、「ただのニキビだろう」と安易に考えず、まずは皮膚科専門医に相談することが最も安全で確実な方法です。
まとめ
粉瘤は、ニキビと間違えられやすいありふれた皮膚のできものです。しかし、「自然に治ることはない」「放置すると炎症を起こしたり、どんどん大きくなるリスクがある」「ごく稀に悪性化する可能性がある」という重要な特徴も併せ持っています。
幸いにも、最近では「切開法」だけでなく「くりぬき法」のような、傷跡が小さく身体への負担も少ない治療法も選択できます。粉瘤が小さく炎症を起こしてないうちに治療すれば、リスクが減り、より小さな傷できれいに治すことが可能です。ずっと気になっているしこりがあれば、一度皮膚科専門医に相談してみましょう。

