院長コラム
蕁麻疹(じんましん)が出る原因
監修者 院長:角村由紀子 【資格・所属学会】 ・日本皮膚科学会皮膚科専門医 ・日本皮膚科学会 ・日本皮膚免疫アレルギー学会 ・日本アレルギー学会 ・日本美容皮膚科学会 正会員 |
蕁麻疹は、一時的に現れる境界がはっきりした赤い発疹や膨疹が特徴で、
多くの場合は数時間から24時間以内に自然に消えるものを指します。多くのケースでかゆみを伴います。
今回は蕁麻疹の種類や原因、治療法について解説していきます。
症状
蕁麻疹は突然現れることが多く、境界がはっきりした円形や地図状のわずかに隆起した膨疹が特徴です。強いかゆみを伴うことが多く、体全体の皮膚や粘膜にも発生する場合があります。特に喉に症状が現れた場合、声がれや呼吸困難が起こることがあり、その場合は緊急対応が必要です。膨疹は基本的に数時間から長くても24時間以内に自然に消えます。
蕁麻疹の種類
① 急性蕁麻疹
急性蕁麻疹は、6週間未満で症状が治まるタイプです。ウイルス感染や薬剤、食物アレルギーなどが原因で起こることが多いですが、原因が特定できない場合もあります。治療は主に抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服を行います。
ステロイド外用薬は効果がありません。かゆみを抑えるために、メントールを含むクリームを処方する場合もあります。粘膜症状が見られる場合や呼吸困難がある場合は、救急対応が必要です。
② 慢性蕁麻疹
慢性蕁麻疹は、6週間以上続くタイプです。この場合も治療は急性蕁麻疹と同じですが、原因が分かりにくく、治るまでに年単位かかることが多いです。抗アレルギー薬が効きにくい場合には、オマリズマブ(商品名ゾレア)(ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤)の皮下注射が保険適用されています。この治療は専門医への相談が必要です。
その他の蕁麻疹
③ コリン性蕁麻疹
入浴や運動、緊張などで体温が上昇し、発汗が引き金となって、直径3〜5mm程度の小さい膨疹が現れることがあります。この膨疹は数分から数時間で消えます。特に汗をかきにくい体質の方に多い傾向があります。
④ 物理性蕁麻疹
物理的な刺激が原因で発生する蕁麻疹です。以下のような種類があります。
・機械性蕁麻疹:こすった部分に一致して膨疹が現れます。
・寒冷蕁麻疹:寒冷刺激を受けた部分や全身の冷却が原因で発生します。
・温熱蕁麻疹:温熱が加わった部分に一致して膨疹が現れます。
・日光蕁麻疹:日光が当たった部分に一致して膨疹が現れます。
・遅発性圧蕁麻疹:下着の締め付けや圧力が加わった部分に膨疹が現れることがあります。
・水蕁麻疹:水に触れると数分後に毛穴に一致した小さな膨疹が現れることがあります。
⑤ 接触蕁麻疹
皮膚や粘膜に物質が接触して数分後に蕁麻疹が現れるタイプです。以下のように分類されます。
・アレルギー性接触蕁麻疹:ラテックスアレルギーなどが原因です。
・非アレルギー性接触蕁麻疹:昆虫などが原因の場合があります。
特殊な蕁麻疹
⑥ 血管性浮腫(クインケ浮腫)
蕁麻疹よりも皮膚の深い部分で発生する浮腫が特徴で、通常かゆみはありません。口唇やまぶたに症状が現れることが多いです。通常の蕁麻疹が24時間以内に消えるのに対し、この症状は2〜5日間持続することがあります。気管支に浮腫が及ぶとアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。
・遺伝性血管性浮腫(日本では稀):
予防には男性ホルモンやトラネキサム酸を使用し、急性発作時には新鮮凍結血漿などを用います。
・非遺伝性血管性浮腫:
蕁麻疹の治療と同様の方法で対応します。
蕁麻疹と間違いやすい疾患
蕁麻疹様血管炎
見た目が蕁麻疹に似ていますが、症状が24時間以上持続する場合はこの疾患が疑われます。紫斑や色素沈着を伴う膨疹や、多形紅斑のような皮疹を繰り返すことがあります。特発性の場合もありますが、基礎疾患として膠原病(例:全身性エリテマトーデス、SLE)が隠れている可能性もあるため、精密検査が必要です。
当院での蕁麻疹の治療について、詳細はこちらをご覧ください。
蕁麻疹について理事長が動画でも詳しく解説しています。
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